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とと姉ちゃん 花森安治の人生観を読み解くポイント5つ

「とと姉ちゃん」で、唐沢寿明演じる花山伊佐次のモデルとなった花森安治。彼のユニークな性格を表す逸話がいくつもある。時代に翻弄された人生、独特の感性、編集者として、コピーライターとして、絵描きとして、そして一人の戦後を生き抜いた人間として、花森安治の人生観に迫ってみたい。

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戦争から学んだこと「もう絶対に騙されない」

戦時中は国策広告、プロパガンダ製作に携わっていた花森安治。有名な「欲しがりません、勝つまでは」は、戦争を知らない世代でも知っているフレーズだろう。公募の中から選ばれたものだが、花森安治がその選択に関わっていたと思われる。そんな花森安治は、戦後このことをとても悔やんだのだ。彼の「もう絶対に騙されない、騙されない人を増やす」という信念は、この戦争での悔しさから来ているのではないだろうか。戦争に負ければ、それまでの価値観は崩壊する。何が本当で何が嘘なのか。信じていたものは実は嘘で、嘘だと思っていたものが実は本当で。花森安治が受けた、戦時中は国民や自分は騙されていたと敗戦時に気づいた時のショック、そして何より国民を騙すことに加担していたことに気づいた時のショックは、友陣には想像できない。

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広告無しの「暮しの手帖」、その原点は

中立の立場を守るため、「暮しの手帖」には広告が無い。これは創刊時から現在まで一貫している。広告があればスポンサー料が生じ、そのスポンサーに有利なことを書いてしまうし、不利なことは書かない雑誌になってしまう。これでは読者を騙していることになりかねない。花森安治の「騙されない人を増やす」という思いは、ここにも反映されている。

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徹底した商品テスト

暮らしの手帖社とは、「暮しの手帖」を出版している会社だが、そこは花森安治にとって商品をテストするための実験室であった。以前紹介した花森安治のストーブ実験は、その場にいなくて良かったと思える内容だが、彼は商品がホンモノかどうか、自らの手で確かめていたのだ。トースターの商品テストのために、何千枚というトーストを焼いたり、ベビーカーテストのためにとてつもない距離を歩かされた母親など。「騙されない」、ここにも花森安治の信念に通じるものがある。

女性の立場を理解するために

「暮しの手帖」は女性をターゲットにした雑誌である。男性である花森安治は女性の立場を理解するため、女装をしたという。おかっぱ頭にスカートを履いた姿で見た世の中は、彼の目にはどんな風に映ったのだろうか。そんな恰好をしていること自体に、当時の人はきっと好奇な目で彼を見たであろうから、その時彼が感じだ違和感や恥ずかしさ、差別など、雑誌の編集に影響したのではないだろうか。だからこそ、100万部も売れた雑誌になったのではと思う。ただ実際に本人がそのように感じたかどうかは謎である。

庶民であるということのこだわり

国が国を守ると言うときの国には、庶民は含まれていないことに、敗戦後気づいた花森安治は、民主主義の民とは庶民であるべきと考えていた。だからこそ、「暮しの手帖」は一般の庶民の暮らしに焦点を当てたのだと思う。花森安治が主だって編集し、極力漢字を使わずないで、読みやすい文章、レイアウト、優しい印象の表紙絵や挿絵などは、子供でも親しめる雑誌であった。そこに庶民とは、大人から子供にまで分け隔て無く含まれていることが示唆されていて、花森安治の庶民へのこだわりが見え隠れする。

最後に

花森安治の編集術やコピーライターの能力は素晴らしい。誰もそれを疑う者はいないだろう。しかし、その優れた能力をどう使うか、使われるかで、世の中に送り込まれた彼の作品は、大きく違う。「騙されない」とは、何が真実なのかは、自ら体験的に知る以外方法は無いということだったのだろうか。

「とと姉ちゃん」で、どのように花森安治が花山伊佐次となって、それを唐沢寿明がどう演じるのか、楽しみである。

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