「世界を変えたダメ偉人」に登場した、数々の有名だけど、家では実は単なるダメ親父たち。そんな偉人たちの本当の姿を再現しながら、どんなに歴史的に偉大な人物も、家ではやっぱりタダのダメ親父なんだなと分かり、思わずホッすること間違いなし。世のお父さんを、ある意味安心させてくれる番組である。
DV夫、夏目漱石
まずは岡本信人が演じる夏目漱石が登場。これは主に娘の目線から見た、父親としての夏目漱石の姿で、番組は進められている。
冒頭での、今ならDV夫として訴えられてもおかしくない暴言ぶりに、思わず唖然、というか絶句。家族で夕食団らん中でも、気に入らないことを家族が言うと、ちゃぶ台を投げ飛ばすダメ親父パターン。
そんなDV夫に妻夏目鏡子は暴露本を出しているというから、もっと驚きである。でもこうでもして、世間から崇拝されている夫の真実の姿を暴露してやりたい妻の気持ちは、十分分かる。
その本で夏目鏡子は、「夏目漱石は息子をボコボコにした」とか「夜中にネズミがうるさいと暴れた」などとのエピソードを綴っている。
実際夏目鏡子は「漱石の思い出」の中で、暴力を振るったり、暴言を吐いたりするときの夏目漱石を「頭の悪いとき」と表現している。離婚を進められたこともあるらしい。当然である。しかし夏目鏡子はそんな「頭の悪いとき」の夏目漱石を病気と諦め、一生添い遂げているから凄い。
娘が証言するには、夏目漱石は執筆中行きづまると、鼻毛を抜いて原稿用紙に並べたり、彼が東大に合格したのは入試中カンニングしたから、とか。知られざるダメっぷり。本当にカンニングして合格できたのなら、その試験中試験管は何をしていたのだろうか。
今年没後100年の夏目漱石の作品は今尚評価されているのは、このダメさ加減も手伝ってのことだろう。
あのリンカーン元大統領
続いては、元米大統領、あの偉大なリンカーンである。伊吹吾郎が演じるこの歴史的政治家に、思わず同情してしまったお父さん方は多いのではないだろうか。
国をまとめるほど、リーダーシップに優れていたリンカーンが、一番怖がっていたのは、他でもない妻のメアリーである。そう恐妻・・・。
息子の証言によると、いつもお母さんに虐げられてボコボコにされているお父さんしか知らないとのこと。暖炉の薪で殴られていたとか。お母さんは家庭では絶対だったそう。
他にも、リンカーンが大統領に初当選し、国民を前に挨拶をする直前、国民に当選を伝えるべきか妻にまず報告かと悩んだ。国民が先か妻が先か。結局妻を選び、報告するためその場を離れ家に帰ったとか。
しかしこの大統領当選。大統領の妻になりたかったメアリーが、常にリンカーンを叱咤激励したことで、リンカーンは大統領になったのかもしれない。
しかしこう見ると、恐妻と愛妻家と何となく似てないことも。見方を変えると、妻を何より一番にするリンカーンであるし、彼は妻に対し誠実であったことはよく知られている。
少なくともこの番組を見たお父さんは、リンカーンに親近感を持つか同情するか、何らかの感情を抱くだろう。
番組では、他にもサルバドール・ダリ、葛飾北斎やリヒャルト・ワーグナーを取り上げている。
歴史に名を残す偉人にも、プライベートな面はとても意外で、私たちと何も変わらないんだな。