人間対コンピューターの将棋対決、電王戦第1局は、コンピューターソフトのPONANZAポナンザが、山崎隆之八段を下しました。先手番のポナンザが85手で勝ったといいますから、割と速い展開だったのではと思われます。
チェスでも将棋でも人間対コンピューターの戦いでは、既にコンピューターが勝利を収めています。どうして人間はまけてしまうのか、この一局における山崎隆之プロ将棋士のケースを交え、考えてみたいと思います。
ポナンザの歴史
ポナンザを開発したのは、山本一成さん。彼自身はコンピューターが苦手でしたが、得意な将棋でもってその苦手分野を克服しようと考えたのが、このコンピューターソフトPONANZAポナンザの開発のきっかけだったとか。しかし、開発当初はとても弱く、初出場した2009年の世界コンピューター将棋選手権では、一次予選敗退でした。
そしてわずかその4年後の2013年の第2回将棋電王戦において、佐藤慎一四段(当時)を141手で破りました。これはコンピューターが初めてプロ棋士に平手で勝利したという、歴史的なことでした。
第1回将棋電王戦で、既にコンピューターは人間を下していますから、以来人間がコンピューターに挑戦している、という構図なわけですね。挑戦者が人間。
でも考えたら、このソフトを開発したのもまた人間なんですけどね。ですからある意味人間対人間とも言えるかもしれません。しかし開発者が直接将棋をさしているわけではないので、やはり人間対コンピューターという図式なのでしょうね。
DEEP THOUGHT(ディープソート)と DEEP BLUE(ディープブルー)
世界に目を向けるとこの将棋ウォーズのように、チェスにおいても人間対コンピューターの戦いの歴史がありました。ディープブルーというチェス専用スーパーコンピューターは、人間に破れてしまったディープソートを受け継いで、開発されました。
そして遂にこのディープブルーはチェスの世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフ(人間)を負かすのです!1997年のことでした。
人間はやっぱり素晴らしい?メディアの反応
このディープブルーの勝利のニュースはとっても大きく取り扱われたので、よく覚えています。新聞に大きく記事が載っていました。
コンピューターが人間に勝利した日、人間がコンピューターに敗北した日。そんな歴史的なことでしたから。
当時のメディアは、どんなに人間が敗れても、一生懸命人間を持ち上げようとしていました。
コンピューターに破れたけれど、人間にはコンピューターには出来ないこんな素晴らしいことがあると。
よっぽど人間が敗れたことが悔しかったのか、コンピューターが勝利したことに恐怖を感じたのか。
どんなことがあっても、人間は素晴らしい、みたいなことが読み取れる報道の仕方でした。
言い訳?それとも本当?人間が敗れる理由
きっと人間の頭脳は素晴らしい。コンピューターにはない優秀さを持っているんだと思います(そう信じたい)。
ただ、人間は疲れるんです。
そう、将棋士たちによれば、何時間も何時間も頭をフルに回転し集中し続けることはできない。そんな長時間思考をピークの状態に保ち続けるなんて不可能であると。
でもコンピュータにはそれができる。
人間の思考能力がピークの状態のときだったら、コンピューターと互角に戦えると。
それに人間は感情を持った動物なんです。
疲れれば集中力が落ちるばかりか、焦ったりパニックになったり、悔しさ、怒りと、感情が入るのです。
ここも人間とコンピューターが大きく違う部分でしょう。
この日の電王対局でも山崎八段は、「想定を外れて、1日目からまずい展開になった。第2局はもっと広く構えてスムーズに指せるようにしたい」と話しています。
想定を外れれば、焦ったりするでしょう。疲れが一気出てくるでしょう。感情も邪魔するようになるでしょう。
しかしそういったことは、ポナンザには起こらないのです。
そう、コンピュータには、心理戦なるものが、存在しないのです。
最後に
このまま人間はずーっと負けつづけるのでしょうか。
やはり人間として、コンピューターに一矢報いたいですね。
心理戦に持ち込んだら、きっと勝てると思うんですけど。