ズートピアとは、zooは動物園、ユートピアは楽園で、この二つの単語をミックスしたタイトルなのは一目瞭然なのですが、もっと奥深い社会的メッセージや細かい笑えるシーンがあるんですね。
ズートピアを100%楽しむために、知っておきたい設定背景をお話しします。
ポイント1: たくさんの種類の動物たち=他民族国家
ズートピアでは、いろんな種類の動物が登場します。主人公のうさぎ、相棒の狐、水牛にかわうそ、なまけものや熊や。とにかくたくさん。一つの種類でなくたくさんの違う種類の動物は、人間の様々な人種や民族の違いを表しています。
これは他の感想記事にも書いてありますから、映画を観ればすぐ分かる社会的背景なのでしょうね。
ポイント2: 動物たちの住み分け=人種や民族による住み分け
一見どの動物もごちゃ混ぜに住んでいるように見えますが、実はよく観ると住み分けがされています。主人公のうさぎジュディが育った街でも、やはりうさぎはうさぎ同士、ズートピアもいくつかの地区に分かれていて、ネズミ目の街やその他それぞれの地区に同じ系統の動物が暮らしています。もうこれは、一つの地区にはある一定の人種や民族がかたまって住居する、実社会と同じです。
ポイント3: ズートピアは市
うさぎの新人警察官ジュディはPoliceポリスなので、このズートピアは「市」なんですね。「市」を管轄するのがポリスですから。ちなみに州はステイトコントロール、国はFBI、国を越えるとCIAです。
ですからこのズートピアには市制がひかれているんだな、と分かります。それにこの街のMayor市長がいますから、100%ズートピアは「市」だと言えます。
ポイント4: 相棒やガキ大将がキツネなわけ
キツネは日本でも、ズルいとかズル賢いようなイメージがありますよね。アメリカでも同じような見方があります。しかも映画の中では肉食動物は悪い獰猛な動物のような偏見があることになっているので、キツネはそういった偏見を持たれるのに最適な動物だと言えるでしょう。
こういった背景があって、詐欺師であるニックや、ジュディが子供の頃いじめられた暴力的なガキ大将も、キツネなのでしょう。
ポイント5: なまけものが働くThe Department of Motor Vehicles(DMV)
陸運局DMVで働くナマケモノは、やはりお役所仕事で仕事が遅い、とか、長く待たされる、ということを象徴しています。
しかしここで一言言わせてください。3時間以上待たされることもありますが、これは来場者が多いからなんです。本当に人が多いんです。ですから一概にお役所仕事で遅いとは、言いきれません。それに窓口で対応してくれる人の仕事が遅いと感じたことは、個人的には一度もありません。それに州にもよるでしょうが、受付で番号札をもらうと、あとどれくらい待つのかが分かるので、その間に食事に行ったり、一度帰宅して仕事をしたりと、ただオフィスで待ち続ける必要はありません。番号を呼ばれたとき、そこにいればいいのです。
ポイント6: レオドア・ライオンハート市長
ズートピア市長は、ライオンです。レオはライオンに由来する名前、そして名字のライオンハートは、勇敢な心を意味します。単にライオンにちなんだ名前なのではなく、意味があるのですね。大都会ズートピアをまとめる市長ですから、勇敢な心が必要なのでしょう。
ポイント7: ダウン・ベルウェルザー副市長がヒツジなわけ
ヒツジはキリスト教では平和のシンボル的な動物です。キリストが聖母マリアから生まれる様子を描いた絵画で、よくヒツジも一緒に描かれていますよね。聖書にもヒツジはよく登場します。ですからヒツジのイメージは心優しい、とか、穏やかとか、そういったことでしょう。しかしこの映画の物語ではとっても重要な役割を持つ存在なんです。映画でも副市長は穏やかに描かれていますが、実はとんでもない、そのギャップがあるのです。映画の前半と後半でのギャップを引き立てるために、ヒツジという設定なのだと思います。
ポイント8: ジュディの両親が多産なわけ
とっても娘思いなジュディのお父さんのスチュー・ホップスとお母さんのボニー・ホップス。この夫妻にはジュディの他になんと275匹の子供がいるんだとか。実際には一匹のうさぎが一生涯でそんなにも産むことはできません。しかし275匹の子供がいる、これが意味するのは、うさぎは多産の象徴的動物だからです。キリスト教において、うさぎは元々豊穣のシンボルです。これもきっとうさぎが多産であることと関係があると思います。
映画の中でうさぎの子供が多く描かれているのは、他にも理由があると思います。ズートピアの世界では、それぞれの動物にそれぞれの役割があり、うさぎは農場で人参作りに励んでいるのがうさぎの人生とされています。農場では多産です。多くの人手がいるので、田舎の農家は多産。そして都会に出て夢を追うのではなく、田舎にいて子供をたくさん産む、それがそこに住む女性の役割。そういったことも表しているのではと思います。
ポイント9: ベンジャミン・クロウハウザー警察官が太っているわけ
ズートピア警察署に入ると、クロウハウザー氏がお出迎えをしてくれます。まさに警察署の顔であり、通信指令も担当しています。しかしとても太っているのは、やはり肥満大国アメリカを象徴していると思われます。特にクロウハウザー氏が少し走って、息を切らしているシーンは、アメリカの太った警察官がゼーゼー息を切らしている、本来ならマッチョでたくましく、走るのも得意なはずの警察官。そんな風刺を入れていると思います。
まとめ
とっても話題のズートピア。これらの設定背景を知っておくだけで、面白さが何十倍にもなること間違いなしです。
社会派映画だという感想レビューが多く観られますが、個人的にはジュディが自分の夢を叶えるため、故郷を離れ、親元を離れて、大都会へ向かうシーンに思わず涙がホロホロ。ああ、子供が巣立っていくぅと。親の心配や反対の中、夢を叶えようとするジュディ。お父さんとお母さんの気持ちを考えると、切なくて・・・。
4月23日の公開が待ち遠しいですね。
*8月11日公開のGCアニメ「ペット」については「永作博美が猫になる!?アニメ「ペット」日本語版でクロエ担当」