今や名実ともに日本のエースとなった宮原知子選手。先月4大陸選手権を制覇したことで、今週始まる世界フィギュアスケート選手権でも去年以上の活躍が期待される。宮原知子選手の前に大きく立場だかるのが強豪ロシア勢である。今年も強いロシア女子。宮原知子選手がこの恐るべしロシア女子に勝つためには、何が必要なのか、どうすれば勝てるのか、世界フィギュアを予測してみよう。
今年も強いぞロシア女子
今年のロシア勢の中でも一番成長著しいのが、今シーズンからシニアに参戦している16歳のエフゲニア・メドベージェワである。グランプリファイナルでは圧倒的強さで優勝している。初出場したヨーロッパ選手権でもエレーナ・ラジオノバ選手を抑え優勝。国際大会よりレベルが高いかもしれないロシア選手権も制している。飛ぶ鳥落とす勢いのスケーターである。今回世界選手権に出場するなかで、多分エレーナ・ラジオノバ選手よりエフゲニア・メドベージェワ選手の方が、ロシアのエースと呼ぶにふさわしいだろう。しかしエレーナ・ラジオノバ選手の方が1シーズン分シニアでの経験が長い。去年世界選手権に出場しているので要領は得ているだろう。そのアドバンテージ分をうまく力に変えることができるかどうかが、この選手にとって鍵になるだろう。
そしてもう一人アンナ・ポゴリラヤ選手は、ロシア選手権で3位に入り、ロシア勢が表彰台を独占したヨーロッパ選手権で3位になったが、今シーズンはジャンプでの大きな失敗が目立つ。グランプリシリーズでは全く結果を残せなかった。演技に安定感が無いのが欠点だ。しかしそこはロシアっ子。パーフェクトな演技をすれば、とても恐ろしい選手であことには間違いない。
宮原知子選手の一番のライバル
やはり今シーズン、一番勢いのあるエフゲニア・メドベージェワ選手であろう。彼女の自己ベストは、グランプリファイナルで出した222.54点である。この試合ではショートとフリー、共に自己ベストを更新した快心の演技であった。この試合で宮原知子選手は208.85点を出しながら、エフゲニア・メドベージェワ選手に次ぐ2位になっている。しかしこのファイナルで宮原知子選手はエレーナ・ラジオノバ選手をきっちり抑えている。これは朗報だ。というのも去年の世界選手権で、宮原知子選手がエレーナ・ラジオノバ選手に勝って逆転2位になったのは、エレーナ・ラジオノバ選手がフリーの日体調が悪く熱もあり、全くの本調子でなかったのだ。もちろんそのような状況の中でプレッシャーに負けず、素晴らしい演技をしチャンスに変えた宮原知子選手は凄い。しかしこの時点ではエレーナ・ラジオノバ選手の方が実力では上であった。そして今シーズンのグランプリファイナル。もうそういう体調云々抜きに、宮原知子選手は実力で勝てるほどになっている。それを証明した試合であった。
宮原知子選手が勝つためのシナリオ
ライバルの弱点
エフゲニア・メドベージェワ選手と宮原知子選手が最後に出場した試合の点数だけを見れば、とても僅差であることが分かる。情感のこもったステップ、ダイナミックなジャンプ、引き込まれるようなスピン、そしてあの表現力と、エフゲニア・メドベージェワ選手に弱点なんてあるのかと思ってしまう。でもあった!ヨーロッパ選手権では、エフゲニア・メドベージェワ選手はショートとフリーでダブルアクセルで減点されているのだ。跳んだジャンプの中で一番簡単なはずだが、前向きに跳ぶアクセルがこの試合では完璧ではない。今シーズン出場した試合でも、このダブルアクセルが彼女にとっては鬼門で、成功しても加点が低かったりする。そしてもう一つ、ルッツジャンプである。外側に踏み切らなければいけないエッジが微妙な状態で、!マークがついていたりする。でもちゃんと踏みきれたときは多くの加点をもらっているので、いいときそうでないときと浮き沈みのあるジャンプなのだろう。だからショートではこのルッツジャンプを外している。
エフゲニア・メドベージェワ選手のミス待ち、というほど宮原知子選手と大きく差があるわけではないが、彼女がアクセルジャンプでミスをして、ルッツジャンプでエッジ違反を取られたら、宮原知子選手に大きなチャンスが舞い込む。しかしこればかりは、宮原知子選手がどうすることもできないが。
ジャンプの加点がキー
4大陸選手権で宮原知子選手の素晴らしいフリー、そして得点。その得点が伸びた一番の要因は、なんといってもジャンプの加点である。もともとスピンには定評があり、時計回り反時計回りをするユニークで、高速に回るスピンは高い加点を貰っている。丁寧なステップも加点はしっかりついている。しかし宮原知子選手は小柄な体で、ジャンプにいまいち華がなかった。低いジャンプでよく回転不足を取られずに回りきって下りてくるのは、返って高難度のような気がするが、いつもジャンプの加点は低く抑えられていた。しかし、先月の4大陸選手権では、ジャンプの加点がとても高く、それが142.43点という高得点につながった。とくに後半に2つ入れている2A+3Tのジャンプには両方共に1.40点も加点がついている。いかに加点のもらえるジャンプを跳ぶか、これが宮原知子選手が世界選手権で多くのライバルを抑え、優勝できるかどうかの一番の鍵になるだろう。
表現力は?
昨シーズンから宮原知子選手の表現力は飛躍的に伸びたと思う。それは得点に反映されている。ジュニア時代まで同じ年の宇野昌磨選手に比べ、表現力はまだまだだった彼女だが、そこは努力の人。ちゃんと表現力にも磨きをかけてきた。現時点ではエフゲニア・メドベージェワ選手の方が表現力は上かもしれない。エフゲニア・メドベージェワ選手の方が身長もあり、あの長い手足。しかし試合をおうごとに宮原知子選手の表現力への評価も上がってきている。そしてシニアで既に3年の経験があることも、有利に働くと思われる。
女子シングルのショートは現地時間3月31日12:10から始まる。